研究・産学官連携の研究TOPICS 医学研究科特別講義「新技術 分子換気と、これがもたらしうる世界」

医学研究科特別講義「新技術 分子換気と、これがもたらしうる世界」

本学では、大学院の使命を達成するため、国内外で活躍する優れた人材、特に医療分野において第一線で活躍する研究者や専門家を講師として招聘し、「大学院医学研究科特別講義」を開催しています。

8月3日、本学旭町キャンパス医学部基礎3号館において、大学院医学研究科特別講義を開催しました。今回は、久留米大学附設中学校・高等学校校長の石橋晃教授(北海道大学名誉教授)を講師に迎え、「新技術 分子換気と、これがもたらしうる世界」と題して講義しました。


 
講義する石橋晃教授
講義する石橋晃教授

講義では、分子換気という新たな技術の概要や、その実現によって期待される医療・科学分野への応用、さらには社会にもたらす可能性について、最新の知見を交えながら分かりやすく紹介しました。

『分子換気』とは、石橋教授が開発したオリジナルの最新技術です。従来のクリーンルーム技術・機械換気システムは、屋外の空気を取り込み、この外気をフィルターで濾過し、これを室内に押し込むことで古い室内空気を全量外へ押し出して置き換える「外気導入型」が主流ですが、この方式では、室内がクリーンになって以降も(濾過するのは無限の外気なので)常にフィルターが目詰まりし続ける上に、フレッシュエア導入(換気)に電力を要するという課題があります。

これに対し、クリーンルームシステムプラットフォーム(CUSP)技術・分子換気は、フィルターを室内に置き、室内の空気そのものを濾過する仕組みです。室内の有限体積の空気を、中~高性能フィルターで繰り返し循環させ濾過します。中性能でも機能するのは、フィルター1回あたりの捕集効率がそれほど高くなくても(例えば、中性能90%フィルターでも)、繰り返し循環させることで(気中塵埃を1回目は1割取り逃すも、2回で100分の1に減り、4回目で1万分の1、8回循環後は、1億分の1へ激減させ)実質的な浄化率を、高性能フィルターすら凌駕し得るほど大きく高められるのが特長です。(フィルターの目が粗くても済むため)電力消費が少なく、フィルター寿命は(一旦室内が清浄化された後は無負荷運転となるため)は半無限です。ここでは、人が滞在する部屋と外界の間を仕切るガス交換膜中を、酸素分子は外界から室内へ、二酸化炭素分子は室内から外界へ拡散していくことで換気が行われます。拡散は、室温の熱エネルギーを持つ空気分子の熱振動により生じるので、分子換気は電力を必要としない技術であり、濃度に差が生じる分子(酸素、二酸化炭素等)のみは濃度勾配に応じて拡散するも、窒素は内外を移動せず、冷暖房空調効率が高まり得ます。SDGsの観点からも非常に優れています。

また、この技術は、高清浄環境にもかかわらず静穏で省エネ性にも優れているので医療・健康分野をはじめ幅広い分野への応用が期待されており、新型コロナウイルス等の感染症流行下では、診察室における感染対策や、災害時の避難所での相互感染防止にも有用であり、その際、睡眠品質の分析を通じて避難者のQOL向上にも有効であることを紹介しました。

さらに、石橋教授は、ご自身の研究者としての歩みを振り返り、若手研究者時代の経験を交えながら、困難な課題にも果敢に挑戦する姿勢が現在の研究につながっていることを語りました。参加者にとって、研究に取り組む姿勢や挑戦することの大切さを考える貴重な機会となりました。


 
 

質疑応答では、多くの質問が寄せられました。麻酔科領域でのガス管理やがん治療への応用可能性についての質問もあり、石橋教授は、現時点では特定の疾患に紐づく成分の検出までは至っていないとしつつ、フィルターに化学的な選択性を持たせることができれば、疾患特有の成分を検出するセンサーとしての発展も視野に入るとの見解を示しました。

講義の最後には、科研費への申請についても触れ、今年度、たとえ採択されなかったとしても、大学全体として次年度の採択率向上という恩恵を受けることができるため、各人が研究計画を立て、申請を増やすこと自体に意味があると語りました。技術の芽を社会実装につなげていくには、粘り強く挑戦を重ねる姿勢が欠かせないというメッセージで、講義を締めくくりました。


 
受講者からは多数の質問が寄せられました
受講者からは多数の質問が寄せられました

【関連サイト】
久留米大学附設高等学校・久留米大学附設中学校


令和8年度医学研究科特別講義 (PDF)

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